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かいけつゾロリ、ダレン・シャン……、あなたもきっと読んでいる、人気児童文学シリーズ

あなたは幼い頃に出会った本を覚えていますか?時代を問わず人気を集めている児童文学のシリーズ作品をご紹介します!

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皆さんの通っていた小学校には、「朝の読書」(読書推進活動)が設けられていましたか?

「読書を習慣づける」といった目的のもと、始業前の短い時間に読書を行う「朝の読書」運動は1988年に開始され、2013年には実施校が27,800校を突破。約10分から15分という短い時間の中、さまざまな本に出会えるきっかけとなった人も多いのではないでしょうか。

先日、そんな「朝の読書」で読まれている本のランキングが公開されました。小学生を対象にしたランキングで堂々の1位に選ばれたのは、原ゆたかによる『かいけつゾロリ』シリーズ。この『かいけつゾロリ』シリーズは9年連続で1位を獲得しており、また2017年には刊行30周年を迎えています。

この『かいけつゾロリ』シリーズのように、今も昔も愛されている人気児童文学シリーズは数多くあります。そこで今回は、色あせない魅力を持ったシリーズ作品の数々をご紹介します。小学校の頃などの子ども時代に読んだことのある本がきっとあるはず。

 

きっかけは不思議なサーカス。手に汗握るバンパイアの世界へようこそ。

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出典:http://amzn.asia/9S7WMWe

主人公の少年、ダレン・シャンがふとしたことから手に入れた、奇怪なサーカスのチケット。好奇心からサーカス団員、クレプスリーの操る毒蜘蛛を盗み出したダレンでしたが、不慮の事故から友人が毒蜘蛛に刺されてしまいます。友人を救おうとクレプスリーを訪ねたダレンは、「友達を助けたいのなら、バンパイアである自分の手下になれ」という取り引きをもちかけられます。

その取引に応じたダレンは、「血を欲してしまう以上、人間社会で生きていけない」という事実に行き着きます。それまでの幸せな日々を捨て、バンパイアとして生きていくことを選んだダレンは、やがて世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていくのでした。

英国の作家、ダレン・シャンによるこのシリーズは、現代を舞台に、闇の世界に生きるバンパイアたちを描いた“ダーク・ファンタジー”(※)です。『ダレン・シャン』シリーズには、味方であろうと敵であろうと、残酷な最期を迎えるキャラクターも多く、不条理な展開に読者はハラハラさせられたことでしょう。特にダレンをバンパイアの世界に引き入れ、後に師匠のような役割を担うキャラクター、クレプスリーが悲惨な最期を迎えた場面では、「そんなまさか……」と衝撃を受けた人も多いはず。

それまでファンタジーといえば「不思議な世界で悪に立ち向かう」主人公が定番だった一方で、ダレンは現代社会で人間と共存できない異形の存在。傷つけてしまうかもしれないという恐れから、ダレンが人間と関係を築くことにためらいを持つ姿がリアルに描かれています。当初は人間だったことを捨てきれずに血を飲もうとしなかったものの、さまざまな出会いと別れを繰り返しながら、バンパイア一族を率いていくまでに成長します。

そしてこの作品のポイントといえば、作者と主人公の名前が同じであること。

この作品の結末において、ダレンは一度命を落としますが、協力者の力により別の姿で生まれ変わります。ダレンは全ての運命が決まったサーカスの夜に戻り、過去の自分がバンパイアの存在を知ることがないよう誘導。過去の自分がバンパイアになることを阻止したダレンが、消滅したところで物語は幕を閉じます。

さらにダレンは自分の日記を過去の自分へ渡るよう、手配をしていました。その日記を使って小説を書くことで、世界を滅ぼそうとする黒幕の存在を伝えようとしたほか、戦いに巻き込まれるかもしれないバンパイアに注意喚起を起こそうとします。つまり、この物語の作者はバンパイアにならなかった場合のダレン・シャンだったのです。現実世界のダレン・シャンと、物語上のダレン・シャンがひとつになったときの感動を、今でも覚えている方も少なくないのではないでしょうか。

※ファンタジー作品で、重苦しい雰囲気や悲劇的展開、残酷な描写など、主人公をはじめとする登場人物にとって不条理な世界観などに重きを置いているもの。

 

みんなが幸せになるように事件を解決?おかしな探偵の謎解きが魅力的な作品。

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小学校教師の経験を持ち、本嫌いの子供へ本を薦めるうちに自分でも執筆をするようになった、はやみねかおる

はやみね氏は、都会を舞台に男子中学生コンビが活躍する『都会のトム&ソーヤ』シリーズ、謎の怪盗クイーンの冒険を描いた『怪盗クイーン』シリーズなど、多種多様な作品において今も昔も多くの読者たちに愛されています。

その中でも1994年から2009年まで15年にわたって刊行された『名探偵夢水清志郎事件ノート』シリーズは、自称名探偵の主人公、夢水清志郎ゆめみず きよしろうと彼の隣人である岩崎三姉妹がさまざまな事件に挑むミステリー作品です。

夢水は、自分の年齢どころか食事すら忘れてしまうような人物です。一般常識や生活力はありません。シリーズ1作目の『そして五人がいなくなる』では、語り手を務める少女、亜衣と夢水の出会いが描かれていますが、おかしな隣人に興味を持った亜衣はそっくりなふたりの妹たちと毎日入れ替わりながら彼の元を訪れていた……といういたずらをしかけます。しかし、夢水は靴の脱ぎ方、利き手といったわずかな手がかりから、亜衣たちは実は三つ子だった……という事実を見事に言い当てます。それは亜衣たち三姉妹が「自分の生年月日さえわすれてしまった人とはとても思えない」と感心するほど。

そして亜衣たちは、見分けがつかないほど似ている自分たちを夢水が見破ったことにより、「見分けがつかないことをアピールしていながらも、私は私だって気付いて欲しかった」という葛藤から解放されることとなります。夢水の「探偵はみんなを笑顔にする職業」という信念にもある通り、彼は自分の推理をもってみんなを幸せにしようと謎を解いていくのです。

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王国を救うため、3人の子供たちが旅に出る。

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2017年の本屋大賞候補作『桜風堂ものがたり』の著者でもある村山早紀の代表作のひとつ、『シェーラひめのぼうけん』シリーズは、悪の魔法使いによって石に変えられてしまった故郷を救うため、お転婆な王女シェーラと内気な魔法使いの少年ファリード、生意気な盗賊の少年、ハイルの3人が旅に出る冒険ファンタジーです。

序盤において、シェーラたち3人は、お互いを信頼していないことからバラバラになってしまう危うさがありました。それでも幼少時の約束からシェーラに好意を寄せているファリード、生意気ながらも実は仲間を信じているハイルはともに困難を乗り越えることで無二の親友となっていきます。

また、村山早紀の作品には共通して魅力的なキャラクターが数多く登場しますが、それはこのシリーズにおける悪い魔法使い、サウードも同様です。

サウードは世界を滅ぼしたうえで王として君臨しようとしていますが、かつてはとある王国の王子でした。優しい両親とともに幸せに暮らしていたサウードはある日、家臣の裏切りにより家族を惨殺され、自らも捕らわれるという悲しい過去を持っていたのです。やがて改心してシェーラたちとともに旅をするようになりますが、キャラクターがそれまで歩んできた背景をしっかりと描こうとしている村山早紀だからこそ、サウードを完全な悪役としては描かなかったのかもしれません。

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女用心棒、バルサと皇子、チャグムの行く先は。

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2014年に国際アンデルセン賞作家賞、2015年に本屋大賞など数々の賞を獲得している作家、上橋菜穂子の代表作、『守り人』シリーズ。一般的な児童文学といえば少年少女が主人公ですが、この『守り人』シリーズでは30歳の女用心棒、バルサが主人公という異色の作品です。

ある日、バルサは川に流された皇子、チャグムを救います。チャグムは、幼い身に、異世界の水の精霊の卵を宿していました。やがて彼の母、ニノ妃からチャグムを連れて逃げるよう依頼されます。バルサとチャグムのふたりは息子を疎み、刺客を差し向けてくる父帝や卵を食らう異界の怪物との戦いを経て、命がけの旅を続けていきます。

この『守り人』シリーズの魅力は、バルサとチャグムのスリルに満ちた冒険はもちろん、舞台となる世界が綿密に設計されている点にあります。目に見える人間の世界と目に見えない精霊の世界、登場する国の成り立ちや伝説など、骨太な世界観は文化人類学者でもある上橋氏の経験が余すところなく生かされているといっても過言ではありません。

そして異世界ファンタジーの要素を強く持つ一方で、国をめぐる権力争いもまた、リアリティをもって描かれています。国の陰謀に巻き込まれながらも、王宮という狭い世界しか知らなかったチャグムが出会いを通して成長していく姿には、きっと勇気付けられたのではないでしょうか。

 

幼い頃に読んだ本の感動は、大人になっても忘れない。

学校の図書館や町の書店で出会い、夢中になって読んだ本は大人になっても忘れないもの。そのときの読書が、大人になった今でも自分を形作っているといった人もいるのではないでしょうか。また、当時最後まで読めなかったシリーズを、今になって読み返すと新たな発見があるかもしれません。

あらためて、幼い頃に読んだ本を思い出し、読み返してみてはいかがでしょうか。

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