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マシンガンズ滝沢が「ゴミ清掃員」の日常を綴る──『このゴミは収集できません』著者インタビュー

「ゴミ清掃員」の日常を赤裸々に綴ったエッセイ本、『このゴミは収集できません ~ゴミ清掃員が見たあり得ない光景~』今、SNSを中心に大きな話題となっています。著者であるマシンガンズ・滝沢秀一さんに、本の裏話や気になるゴミ清掃の世界についてお聞きしました。

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嵐の日も雪の日も、街中に捨てられた「ゴミ」を収集し続けるゴミ清掃員。過酷そうというイメージはありつつも、実際にゴミ清掃の仕事についてよく知っている──という人は少ないのではないでしょうか。

そんな「ゴミ清掃員」の日常を赤裸々に綴ったエッセイ本、『このゴミは収集できません ~ゴミ清掃員が見たあり得ない光景~』が2018年9月に出版され、今、話題を集めています。

著者は、お笑い芸人とゴミ清掃員の二足のわらじを履いている、マシンガンズの滝沢秀一さん。発売から2ヶ月ですでに3刷出来となった注目の本の著者に、「ゴミ清掃」の世界についてのあれこれをお聞きしました!

『このゴミは収集できません ~ゴミ清掃員が見たあり得ない光景~』

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出典:http://amzn.asia/d/3kETAt0

意外と居心地がいい「ゴミ清掃」の世界

──滝沢さんは、どのようなきっかけでゴミ清掃の仕事を始められたんですか。

滝沢秀一氏(以下、滝沢):今から6年前、子どもができて定収入が必要になったんです。マシンガンズとしての活動ももちろん続けていたのですが、漫才の仕事は毎日あるわけじゃないので、当時は厳しい生活を送っていて。

慌ててバイト募集のページを漁ってみたんですが、「35歳まで」という年齢制限を設けているところがほとんどで、36歳の自分にできそうな仕事はまったくなかったんですね。「年齢不問」と書いてあるところに電話しても、やっぱり年齢を言うと渋られて、9社連続で落とされたんですよ。

それで、どうしようと焦りながら元芸人の友達に電話したら、「俺、今ゴミ清掃やってるよ」と。自分でもできるか聞いたら、36歳でも全然できるよって言うんです。それが、ゴミ清掃という仕事との最初の出会いでした。

 
─仕事を始められるまでは、ゴミ清掃という仕事にどんなイメージを持っていましたか?

滝沢:夏、額に汗しながらゴミを収集している清掃員の方を見かけることはあったので、ハードワークなんだろうなというぼんやりとしたイメージはありました。でも正直、どういう仕事なのかは考えたこともなかったですね。

実際にゴミ清掃を始めてみると、居心地がいいので驚きました。もちろん肉体的にはしんどいときもあるのですが、本当にどんな年齢・国籍の人でもできる仕事だし、面白いんですよ。同じ業界の人がよく「3年働いたらもうこの世界から抜け出せなくなる」って言うんですが、たしかに僕自身もゴミ清掃を6年続けてきて、もう辞めたいとはまったく思わないです。

 
──『このゴミは収集できません』を発表するきっかけになったのは、Twitterで滝沢さんがつぶやかれていた、ゴミ清掃にまつわるツイートですよね。そこから、どのような経緯で本を出版されることになったのでしょうか。

滝沢:Twitterはもともとやっていたんですが、去年の夏、見ている人にクスッと笑ってもらえたら嬉しいなと思ってゴミ清掃のあるあるネタをつぶやいてみたんです。そうしたら有吉弘行さんがそのつぶやきをリツイートしてくれて。


(本のきっかけにもなった、ゴミ清掃にまつわるツイート)

翌日、再びゴミ清掃のあるあるネタをつぶやいたら、有吉さんがまたもやリツイートしてくれて……そのツイートをきっかけに、少しずつ注目してくれる人が増えていったという感じです。それからはほぼ毎日ゴミ清掃のことをつぶやくようになったんですが、しばらくは、有吉さんを笑わせたい一心でツイートしてましたね。

ツイートを見ていた編集者の方から「本にしたい」というお話をいただいたのは、今年の春です。Twitterのダイレクトメッセージを通して連絡をもらったのですが、最初信じられなくて、もし嘘だったとしても面白いからいいか、みたいな気持ちで打ち合わせに行ったんですよ(笑)。でも実際にお会いしたらちゃんとした方で、すごく熱量を持って企画を提案してくださったので、ぜひということで書籍化が決まりました。

増えたゴミ、減ったゴミから世相が見えてくる

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──書籍化にあたって、エッセイはすべて書き下ろされたんですよね。ゴミ清掃中、ペットボトルの袋に混じってブラジャーが入っていたとか、大量の「えのきバター」が捨てられていたといったエピソードが印象的だったのですが、他にも、ゴミ清掃の仕事で遭遇した信じられないような出来事はありますか?

滝沢:変なものが捨てられているとやっぱり記憶に残りますよね。ペットボトルに混じったブラジャーもそうですし、一度、缶のゴミ収集の場所に大量のアサリの殻を詰めた袋が捨てられてたことがあって、それは驚きました。

あとは、夏の間、僕がゴミ収集に行くといつもネグリジェのような格好で出てくる、愛想のいい60歳くらいの住民の方がいたんです。いつも決まってワカメちゃんみたいな短さのネグリジェを着られていて、「やだ、恥ずかしいわ~」とか言いながら出てくるので、一度、冗談で「ちょっと、朝から刺激が強いですよー」って声をかけたんですね。そしたら、あとから清掃事務所に「いつも来る作業員が、私のことをいやらしい目で見てくる」というクレームの電話が入ったらしくて……ほんとに、ゴミ収集をしてると、いろんな方がいるなあと思いますね(笑)。

 
──ゴミの出し方やその中身を見ていると、地域差や今の流行を感じることがある、とも本に書かれていましたよね。

滝沢:そうですね。たとえば、富裕層の方が多く住んでいる地域のゴミ収集をしていると、コンビニでは見かけないようなワインとか、ウォーターサーバーの水のボトルとかをよく見ます。でも実は富裕層の方が多い地域にも強弱があって(笑)、ゴミを出すポリバケツが汚れていたり、あまりしっかりと分別がされていなかったりすると、「この家の人はゴミを自分で捨てていて、綺麗に出す余裕がないんだろうな」と思います。本当にお金持ちの方の家だとお手伝いさんがいるので、ポリバケツもまず綺麗なんですよね。

それから、流行ということで言うと、ここ数年は缶コーヒーのゴミが非常に減ったなと感じます。コンビニの美味しいコーヒーが手軽に買えるようになったので、みんな缶コーヒーを飲まなくなったんでしょうね。あとは、電子タバコが普及したせいか、100円ライターが大量に捨てられることが増えましたね。

 
──なるほど……ゴミから世相が見えてくるのはとても興味深いです。ちなみに、滝沢さんから見て、「このまとめ方は嬉しい!」と思ったゴミの捨て方などはありますか?

滝沢:一度、竹串がティッシュの空き箱に入れて捨てられていたことがあって、これは素晴らしいなと思いました。竹串で袋が破けないようにという配慮だと思うんですが、ちゃんと別のゴミである空き箱を利用してまとめてくれていて、プロの主婦の人の仕事かなと。
あと、必ずしもそうしてほしいというわけではないんですが、やっぱり、小分けにしたゴミを出すときはビニール同士を結んでいただいたり、できるだけ一度に運べるような形にしてもらえるとすごくありがたいですね。

「ちょっとだけゴミについて考えてみようと思った」という反響が何より嬉しい

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──ゴミ清掃の仕事の中で、これは辛いな、と思うのはどんなときですか?

滝沢:しんどいのは、やっぱり夏と冬ですかね。夏は暑いし、冬は雪が降ると道も渋滞するし……。特に、夏のペットボトルのゴミの量の多さは、一度みなさんにも見てもらいたいくらいです。ひとつの収集所で出るゴミの量がとにかく増えるので、朝早くから始めて、夜6時くらいになっても回収しきれないんですよ。どうしてこんなに多いんだろう、と思いますね。

 
──本の最後には、「日本ではまだまだゴミの減量化が浸透していない」という提言もされていましたよね。やはり、ゴミ清掃という仕事をきっかけに、減量化や分別といったゴミ問題にも目を向けられるようになったのでしょうか。

滝沢:そうですね。僕も今少しずつ勉強しているのですが、たとえば、分別が不十分で可燃ゴミの中に不燃ゴミが多く混じってしまっていると、焼却炉でゴミを燃やすときに、ゴミが入りきらないので焼却炉を一度止めなきゃいけなくなるんですよ。燃えなかったゴミを手作業でかき出して、また焼却炉に火をつけるわけです。
で、このとき、一度止めた焼却炉に再び火をつけるという作業に、だいたい250万円から350万円の費用がかかると言われています。そういった家庭ゴミの処理費用というのは税金で賄われているわけですから、当然、僕たちの生活にも大きく関わってきますよね。

 
──そういったエピソードを聞くと、ゴミを分別することがなぜ重要なのかが身をもって分かりますね。

滝沢:本当にそうですよね。ゴミの研究者の方々も努力を重ねてくださっているので、ゴミの焼却技術も昔と比べたら格段に上がっています。それでも、東京のゴミの埋立地はあと50年しか持たないと言われている現状がある中で、減量化や分別にまったく気持ちが向かない人がいまだにいることには心が痛みます。

だから、この本を出したことで「今までゴミのことなんか考えたことなかったけど、ちょっとだけ考えてみようと思った」という感想をTwitterなどでもらえるのが、本当に嬉しいですね。同業者のゴミ清掃員の方々からも、「これでゴミ業界がもっとよくなればいいね」と言っていただけています。

 
──滝沢さんは、『このゴミは収集できません』の前にもサスペンス・ホラー小説『かごめかごめ』を発表されていますよね。次に出される本の構想なども、すでにあるのでしょうか。

滝沢:小説に関しては、趣味で13~14年くらい書き続けているので、今後も続けると思います。ゴミ清掃というテーマで言うと、漫画や絵本なんかにするのもいいかな、と今考えています。
僕にも2歳と5歳の子どもがいるのですが、リサイクルってやっぱり習慣だと思うんですね。だから、子どもが小さいうちから絵本でそういうことを教えられたら、自然とゴミを分別してリサイクルできる大人になってくれるかなと。

僕が発信することが、いろんな人たちがゴミについて考えてみるきっかけになってくれたら何より嬉しいなと思っています。明日の朝(※取材日は10/31)は、ボランティアで渋谷まで、ハロウィンのゴミ清掃に行こうと思っています。

 

【プロフィール】

マシンガンズ 滝沢秀一
1976年生まれ。1998年よりお笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、2012年から清掃員としてゴミ収集会社で働いている。
Twitter:@takizawa0914

<了>

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