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菊池良の「もしビジネス書が詩だったら」──『人を動かす』【第3回】

堅苦しいイメージの強い「ビジネス書」が、もし「詩」だったら──? この連載では、『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(共著・神田桂一)シリーズがメガヒットを記録しているライターの菊池良さんに、ビジネス書の内容を要約・凝縮し、自由詩に変換してもらいます。第3回のお題は、あらゆるビジネスパーソン必読書の原点、『人を動かす』(デール・カーネギー)です。

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堅苦しく読みにくいイメージの強い「ビジネス書」を、簡潔かつ文学的な「詩」に変換して読み解く連載「もしビジネス書が詩だったら」

第3回のテーマは、『人を動かす』(デール・カーネギー)。1937年に初版が発表され、瞬く間にベストセラーとなった本書は、ビジネスパーソン必修本の原点とも言われている1冊です。人間関係に疲れたときやストレスに悩まされたときに開きたいこの名著を、菊池良さんがやさしい言葉と“詩”から読み解きます。

すべての人間は、人間関係に悩んでいる

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すべての人間は、人間関係に悩んでいる。
本屋に行けば、どうやったら人間関係が楽になるかを説いた本がたくさん置いてある。
100万部超えのベストセラーになった『嫌われる勇気・自己啓発の源流「アドラー」の教え』(古賀史健、岸見一郎・著)もそうだし、30万部突破の『頭に来てもアホとは戦うな!』(田村耕太郎・著)もそうだ。

デール・カーネギーの『人を動かす』は、そういった本のなかでも古典の部類に入る。原初は1937年に出版され、日本語訳は1958年に出版された。世界各国で1500万部以上売れたという。

「人間関係の教科書」が作りたかったカーネギー

カーネギーは1888年、アメリカに生まれた。ミズーリ州立学芸大学を卒業後、教師、セールスマン、食肉会社員などの職を経たあと、YMCAの弁論術講座の担当になり、さまざまな会社の講習会を開くようになる。
カーネギーは指導をするにあたって、人間関係について何か教科書になるようなものはないかと探した。しかし、見つからなかった。そこで彼は自分でそれを書くことにしたのだ。

そうしてできあがったのが『人を動かす』だ。カーネギーはほかにも、悩みの解決法を説いた『道は開ける』、人前で堂々と話す方法を説いた『話し方入門』という本を書いていて、いずれも自己啓発本の古典としてロングセラーになっている。

「批判をしない」、「心から褒める」……書かれていることはひたすらベーシック

本書は「人を動かす三原則」、「人に好かれる六原則」、「人を説得する十二原則」「人を変える九原則」、そして「幸福な家庭を作る七原則」について書かれている。それぞれの原則について、偉人たちの豊富なエピソードを引用しながら説明していく。

本書で書かれていることはひたすらベーシックだ。「人は見た目が9割」のような「えっ!?」と思うようなことは書かれていない。
たとえば、タイトルにもなっている「人を動かす」三原則の中身はこうだ。

1.批判も非難もしない

人を批評したり非難したり小言を言ったりすることは、どんな馬鹿者でもできる。そして馬鹿者に限ってそれをしたがるものだ。

2.率直で、誠実な評価を与える

人間は例外なく他人から評価を受けたいと強く望んでいるのだ。この事実を、決して忘れてはならない。

3.人の立場に身を置く

人を動かす唯一の方法は、その人の好むものを問題にし、それを手に入れる方法を教えてやることだ。

そのほかにも、「心からほめる」、「笑顔を忘れない」など。根底に流れている原理原則は「相手を尊重しなさい」ということだ。話し相手の名前を覚え、誠実な関心を寄せ、相手の話に耳を傾ける。

「説得力のある文章」の見本にすることも可能

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また、この本を読めば、読者が楽しめて、説得力のある文章(あるいはスピーチ原稿)の書き方もわかる。

この本の書き方は一貫している。章のはじめに言いたいことの結論を書き、その主張を補強するようなエピソードをいくつか引用していく。そして、最後にまた繰り返し結論を言う。
これは現在出ているいろんな本にも使われている手法で、引用の部分が、ある大学での研究結果だったり、ビジネスの実例だったり、あるいはマンガのエピソードだったりする。
たとえば、前の章で触れた「人を動かす三原則」のなかの「人の立場に身を置く」という原則については、

エマーソンとそのむすこが、子牛を小屋に入れようとしていた。ところがエマーソン親子は、(中略)自分たちの希望しか考えなかったのである。むすこが子牛を引っぱり、エマーソンがうしろから押した。子牛もまたエマーソン親子とまったく同じことをやった──すなわち、自分の希望しか考えなかった。四肢を踏んばって動こうとしない。
見かねたアイルランド生まれの女中が、加勢にやってきた。彼女は、論文や書物は書けないが、少なくともこの場合は、エマーソンよりも常識をわきまえていた。つまり、子牛が何を欲しがっているかを考えたのだ。彼女は、自分の指を子牛の口にふくませ、それを吸わせながら、やさしく子牛を小屋へ導き入れたのである。

という非常にわかりやすくユーモラスなエピソードで、「人の立場に身を置く」とはどういうことかが説かれている。
この書き方なら読んでいるほうは、エピソードをストーリーとして、あるいは雑学として楽しみながら、著者の言いたいことが頭に入ってくるようになっている。『人を動かす』ではシンプルにこの構造が繰り返されているので、読むことによってそれを体得できるだろう。

『人を動かす』がもし詩だったら──(作・菊池良)

カーネギー詩

 
 

【プロフィール】菊池良(きくちりょう)

ライター。2017年に出した書籍『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(共著・神田桂一)が15万部のスマッシュヒット。そのほかの著書に『世界一即戦力な男』がある。
Twitter:@kossetsu

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