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【閲覧注意】本当はエロくてグロい『千夜一夜物語』

ペルシャの王の元へやってきた女性、シャーラザッドが毎夜物語を語る形式の『千夜一夜物語』。1,001つもの物語の中には『アラジンと魔法のランプ』など有名なおとぎ話がある一方、官能的で暴力的な物語も多くあります。今回はそんな数多くの中から、強烈な印象を残すものを紹介します。

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砂漠の王国を舞台に、魔法のランプを手にした貧しい青年、アラジンが王女を助けて宝を手にいれる物語……、と聞けば、多くの方が『アラジンと魔法のランプ』を思い浮かべるのではないでしょうか。

この物語はイスラム世界における説話集、『千夜一夜物語』のうちの一部。ペルシャの王、シャフリヤールに対し、聡明な女性シャーラザッドが毎夜物語を語る形式のこの作品は、タイトルの通り1,001編もの物語が存在します。

そんな『千夜一夜物語』は、実は官能的で暴力的な物語の宝庫。シャーラザッドは異国の冒険譚、奇譚、ホラ話、おとぎ話と多種多様な物語を王へ語りますが、その中にはとても子どもに聞かせられないようなものも少なくありません。

今回はそんな『千夜一夜物語』の中から、「エロくてグロい」エピソードを抜粋し、ご紹介します。

 

あらためて『千夜一夜物語』のおおまかなストーリーを知ろう。

Arabian night

『千夜一夜物語』は、シャフリヤールが妻の不貞を知ったことから始まります。妻と相手の奴隷たちの首をはねて殺し、女性不信となった王は、やがて街中の生娘を宮殿に呼び出し、一晩を過ごした翌朝に殺す……、といったことを繰り返します。そんな事態に胸を痛めた大臣の娘、シャーラザッドは自ら王の元に嫁ぐのでした。

「お前も殺されることはない」と父親からの反対を押しのけて嫁いだシャーラザッドでしたが、実は彼女には自分の置かれた状況を打開するアイデアがありました。

けれども、シャーリヤル王が娘を寝床へともなってたわむれはじめ、いざ、一儀におよぼうとすると、娘は涙を流した。そこで、王が「なにが悲しいのだ?」とたずねると、娘は「もし、現世の王さま、わたくしには妹がひとりございます。今晩、世の明けないうちに、妹に別れを告げたいのです」と答えた。
国王は、そこで、さっそくドゥニャザッドをよびにやった。妹娘は参上すると、手をまげて床にひれ伏した。王は寝台の足もと近くに妹を坐らせた。それから、王は立ちあがって、花嫁の新鉢を割り、三人とも眠りについた。けれども、夜半になると、シャーラザッドは目を覚まし、妹のドゥニャザッドに合図した。すると、妹は身を起こして言った。
「ねえ、お姉さま、どうか楽しくて、おもしろい、これまでついぞ聞いたことのない、お話をしてください。お話をうかがっておれば、残った夜の、眠れぬ時間も早くたっていきますから」

『千夜一夜物語』バートン編より

王が床に入った後、シャーラザッドの妹であるドゥニャザッドは姉から事前に言われていたように、物語をねだります。そこで古今東西の面白いお話を知るシャーラザッドが王と妹の前で夜通し語り、夜が白んできたときに「王様が私の命を助けてくだされば、明日の晩はもっと面白いお話をお聞かせできるわ」と打ち切ります。話の続きが気になる王は、シャーラザッドを生かし続けることを余儀なくされるのです。

賢いシャーラザッドは、多種多様な物語を語ることができるほか、王のリアクションがいまひとつだったときには「では、こんなお話はいかがでしょう」と臨機応変に話を変える柔軟さも持っています。加えて妹ドゥニャザッドが「なんと面白くて、趣深いお話なのでしょう!」と横から盛り上げるため、王も否応なしに「続きを聞くまでは殺さない」と約束することとなります。

そんな流れを繰り返して迎えた1,001日目の夜、シャーラザッドが部屋に招き入れたのは王との間にできた3人の子どもでした。知らぬ間に子どもが生まれていた事実に感動し、改心した王は残虐な行為を止め、あらためてシャーラザッドを正式に妻として迎え入れて物語は幕を閉じます。

『千夜一夜物語』は、シャーラザッドが、自分はもちろん、王国に住む娘たちの命を救うために行った命がけの語りだったのです。

 

女が絶倫となった驚くべき理由とは。/『王女と猿』

Portrait woman wearing Iran or Arab traditional dress standing on sand riverside

355日目の夜に語られたのは、ある奴隷と肉屋のお話でした。

カイロで肉屋を営む若者には、気がかりな客がいました。それは、毎日お昼に肉を買っていく奴隷のこと。ひどく黄ばみ、やつれている奴隷の顔を目にした肉屋は「あんな顔色をしているのだから、あの奴隷にはきっと秘密があるに違いない」と思い、こっそりと尾行します。

そこで肉屋が目にしたのは、驚くべき光景でした。

奴隷は家へはいると、すぐ火をおこして、肉を料理し、腹いっぱい食べました。残りの料理をかたわらの狒々ひひに与えると、狒々も同じようにたんまり食べました。それから、奴隷は着物をぬいで、このうえなく華やかな女の衣装を身にまとったので、てまえは初めて相手が女だと気がついたのでございます。それから、女は酒を出して自分も飲み、猿にも飲ませました。すると、猿めは立てつづけに十回ほども一物をぬきさししたので、女は悶絶してしまいました。猿はそのまま女の体に小蒲団をひっかけて、自分の席に戻りました。

なんと、肉屋が尾行した奴隷は女であり、猿との間に肉体関係を結んでいたのです。思わずその場に飛び込んだ肉屋は猿に殺されかけますが、包丁で猿を返り討ちにします。

目を覚ますやいなや、猿の後を追おうとする女に対し、肉屋は猿の代わりになることを約束してなだめすかします。しかし、女の求めはあまりにも激しすぎたため、肉屋は息も絶え絶えに。困った肉屋は老婆に頼み、女の精力を消すための薬を処方してもらうのでした。

「まじり気のない酢がいっぱいはいった鍋とね、傷草というひかげみずを百匁ばかりもってきなさい」と言います。てまえが言いつけられた品を持っていくと、老婆は酢といっしょに鍋の中にひかげみずを入れ、火にかけてぐらぐら煮立てました。それから、てまえに女と交わるように申しますので、てまえは相手が気絶するまで交会を重ねました。老婆はぐったりとなった女の体を抱きあげると、玉門を鍋の口にあてがいましたので、湯気が裂けめにはいり、やがて、なにやらころりと落ちてきました。よく調べてみれば、なんとそれは二匹の小さな虫で、一匹は黒く、一匹は黄色い色をしているではありませんか。

女の体から出てきたのは、女が15歳のときに処女をささげた相手と猿から生じた虫でした。老婆のおかげで女は精力が落ち、肉屋の若者とその後も幸せに暮らした……、というお話です。

日頃奴隷の服を着て自分の身分を隠していた女が、華やかな衣装を着て本来の姿を現わすのは、どこかおとぎ話のよう。しかし、その後に待ち受けていたのは決して子どもに読み聞かせできるような展開ではありません。

肉屋の若者が気になる客を尾行したら、猿と女が行為に及んでいた展開もさることながら、さらに女の精力を落とすための処置として「酢と薬草を煮込んだ鍋の前で女が気絶するまで行為を続ける」のは、想像しただけでも生々しいイメージを誘いますね。

 

残虐表現オンパレードの冒険譚。/『船乗りシンドバッド』

Old wooden treasure chest with strong glow from inside.

537日目から566日目にかけて語られたのは、『船乗りシンドバット』のお話です。船乗りのシンドバッドが経験した7回もの航海をもとにしたこの物語は、幾度となくアニメ化されているため、どこかで触れた方も少なくないはず。

『船乗りシンドバッド』は、勇敢なシンドバッドがお宝を求めて冒険をする、子供向けの作品といったイメージが強いかもしれませんが、『千夜一夜物語』に見られるものは残虐な表現のオンパレード。読んでいてぞっとすること間違いありません。

 

人間が丸焼きにされて、丸呑みに?絶望的な状況が続く3回目の航海。

3回目の航海で、シンドバッドの乗った船は大勢の猿に取り囲まれて壊されてしまいます。突然のトラブルにより、近くの島に上陸せざるを得なくなったシンドバッド一行は、そこが巨人の島であることに気がつきます。

突如現れた巨人は、船員を次々とつまみ上げてひっくり返したかと思えば、撫で回し始めるといった行動を繰り返します。ついに船長の番になったとき、巨人は突然恐ろしい行動に出るのでした。

ところで、船長は筋骨たくましく、見るからに頑丈な、肩さきのもりあがった男で、まるまる肥えて、とても強壮な体軀をしていました。その様子が、相手のお気に召したとみえ、巨人は船長をひっつかむと、いきなりぢべたにたたきつけて、首に足をかけてへし折ってしまいました。それから、長い焼き串を持ってきて、これを背中から頭のてっぺんへ突き刺すと、勢いよく火をおこして、その上に串刺しにした船長をのっけました。

なんと、巨人は船員を食べるために、ひとりひとり品定めしていたのです。過酷な船旅で痩せっぽっちだったシンドバッドは巨人にとって“美味しそう”ではなかったため、丸焼きにして食べられてしまうことはありませんでした。

この後も次々に船員たちは食べられてしまいますが、残った者たちは巨人が眠りこけている隙をついて目を攻撃。小舟で脱出を試みますが、さらに大きな巨人がやってきてシンドバッドを含む3人以外は全員殺されるという絶望な状況に追い込まれます。

なんとか3人で巨人の島から脱出できたかと思えば、次の島で仲間が大蛇に丸呑みにされてしまいます。

うわばみはやおら鎌首をもたげると、仲間のひとりを捕え、一気に肩のあたりまで吞みこみました。それから、残った体をごくりと鵜呑みにすると、腹の中で仲間の肋骨がばりばりと砕ける音が聞こえました。

シンドバッドは自分の体を板で挟み、ロープでぐるぐる巻きにすることで蛇から丸呑みにされることから難を逃れました。ただ、たくさんいた仲間はひとりも残っていません。丸焼きにされた船長、大蛇に生きたまま呑まれて骨を砕かれた仲間といったように、あまりにも残酷な最期を迎えています。

東京ディズニーシーにはこの『シンドバッドの冒険』をモチーフとしたアトラクションがあり、かつてこの巨人と対決する場面も描かれていました。現在このアトラクションはストーリーを一新し、シンドバッドは捕まっていた巨人を助け、仲良く音楽を奏でるシーンへと変更されています。やはりアトラクションという子どもの目に触れるものだったためか、原作通りでは恐怖を喚起させてしまっていたのでしょう。

 

勇敢なヒーローのはずが……女性を殺し、食料を奪うシンドバッド。

Halloween hands behind transparent glass background as silhouette

なんとか大蛇から逃げたシンドバッドは通りかかった船に救助された後、4回目となる航海をします。

次の航海では、出航後に嵐で船が難破する波乱の展開を迎えます。シンドバッドたちは打ち上げられた島の住人に食べ物を与えられますが、それを口にしたら最後、知性を失って家畜同然に扱われるしかないのです。吐き気を催したシンドバッドは食べ物に手をつけず、島の反対側にある街に逃げ出します。

やがて街でシンドバッドは妻をめとりますが、その地には「伴侶が死んだ場合、ともに生き埋めにされる」という恐ろしい取り決めがありました。妻が病死したシンドバッドも例にもれず、真水1瓶とパン7切れというわずかな食料を持ったまま古い井戸に置き去りにされてしまいます。

そのまま食料も尽きようとしていた矢先、シンドバッドは井戸の入り口を塞いでいた岩が動き、光が差し込んだことに気がつきます。それは、別の死人とその配偶者が投げ込まれたことを意味していました。

わしはこれさいわいと、死骸の脚の骨を手にとって、女のそばに近づき、いきなり脳天をはっしとなぐりつけました。女は、あっとひと声叫ぶなり、気を失って倒れてしまいました。わしは二度、三度と女をなぐりつけて、相手の息がとまったのを見すますと、パンと水を奪いました。

シンドバッドは新たに井戸に投げ込まれた配偶者を殺し、食料を奪って生き延びます。やがてシンドバッドは死体を貪り食らうために抜け穴からやってきた獣の後を追い、井戸から脱出するのでした。

どんなに過酷な船旅でも、持って生まれた強運で危機を回避したシンドバッド。時に小狡こずるく立ち回ってでも生き延びようとする姿は子どもにあまりおすすめできないものの、大人があらためて読めば、新たなシンドバッドの姿が見えてくるかもしれません。

 

浮気を疑われた王妃の驚くべき言い訳/『セット・ゾバイダの現行犯』

Close up hand of having sex on a bed. make love

388日目から389日目に語られたのは、浮気を疑われた王妃と王のお話、『セット・ゾバイダの現行犯』です。

昼寝をしようとしたハルシ・アル・ラシッド教王は、シーツに真新しい精液がべったりとついていることに気がつきます。驚いた教王は王妃を呼び、尋ねますが王妃は「それは精液でございますわ」、「しかし私には身に覚えのないことでございます」としらを切るばかり。話は半官のアブ・ユスフを呼び寄せるまでに至ります。

半官は天井を見あげて、隙間があるのを認めると、教王に申しました。「おお、忠良な者の大君さま、蝙蝠こうもりの精液は人間の精液によく似ております。ですから、これは蝙蝠の精液でございます」

アブ・ユスフはそう言うと、長い槍で天井の隙間を突き刺し、コウモリを仕留めます。こうして王妃への疑いは晴れるのでした。

これは『千夜一夜物語』の中では比較的短いお話ですが、昼寝をしようとした教王がシーツに“流したての生々しい精液”を見つけたことから始まる、衝撃的なもの。疑いが晴れたことを喜んだ王妃は声高く叫んで小躍りして喜び、アブ・ユスフに過分な褒美を取らせたともありますが、どうしても「このふたりの間にはただならぬ関係があったのでは?」と思わせるような描写があることも事実。

そもそも、シャーラザッドが物語をしている相手は、妻の浮気により女性不信になったシャフリヤール王です。明言されていませんが、王妃と判官の浮気が判官の機転でごまかせた話と読み解くと、シャーラザッドは話のチョイスを間違えたようにも思えますね。

 

大人が読んでも刺激的な、1,001の物語。

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今回ご紹介したお話は、『千夜一夜物語』の内のごく一部。この他にも薬で幻覚を見た男が性的な妄想を繰り広げるものや、罰により両腕を切り落とされた女性が救済されるものなど、読んでいて驚くお話がたくさん詰まった作品です。

今でこそそんな膨大な数の物語が見られる『千夜一夜物語』ですが、発見された当初はわずか282日分しかなかったのだとか。初めてヨーロッパにこの作品を伝えたフランスの東洋学者、アントワーヌ・ガランがトルコ近辺の住人から聞いた昔話を追加したほか、ヨーロッパで残りの物語探しが盛んになって次々と付け加えられた結果、現在の形になったといわれています。

そんなバリエーションに富んだお話を満喫できる『千夜一夜物語』を、あなたもぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。

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