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月曜日から金曜日まで読書をしよう。曜日がタイトルに入る物語・平日編

月曜日といえば一週間の始まり。多くの人が会社や学校に行き始める日、金曜日は翌日の休みを見越してはしゃげる日など、人によって曜日の楽しみ方はそれぞれです。今回は、そんな「曜日」がタイトルに入っているおすすめの本を紹介します。

曜日がタイトルに入る小説・平日編

働く女性の本音「月曜日は憂鬱」-『やってられない月曜日』柴田よしき

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https://www.amazon.co.jp/dp/4104711039/

【あらすじ】コネ入社だけれど業界大手の出版社に勤務して、経理として風当たりの強い日々を送る高遠寧々。コネ入社同士仲良くなった百舌鳥弥々と、恋人がいなくてもわりと楽しい日々を送っている。しかし平和に過ごしたくても、会社という枠の中でトラブルは尽きず……。

コネ入社で、望まない経理部に配属された寧々は、エレベーターがなかなか来ないことや、編集部がシステム通りに経費精算書を作らないことに腹を立てながら、週末を待つごく普通のOLです。Nゲージ(鉄道模型)ジオラマ用の1/150のスケールで住宅模型を作ることが趣味で、ルックスに自信はなく、恋人もなし。大手出版社の高層ビルの中で自分がどう生きていくべきかぼんやりと考えてはみるものの、28歳だからといって焦って恋愛する必要はないと思っています。

恋愛だけがこの世界の楽しみのすべてだなんて、思っている連中の方がある意味、不幸なのだ。この世界には、恋愛より楽しいことだって、けっこういっぱいあるんだから。ほんとに、あるのだよ。

「自分の好きなものは好き、周囲がどう見ようと関係ない。それって、むっちゃポジティヴじゃない。そういう姿勢で死ぬまで生きていられたら、人って、かなり幸せなんだと思う。」

しかし目的もなく会社に無心で勤めるだけの「会社ゾンビ」になっていいものかと悩み始めた時に、経費精算の件で一悶着あった小林樹と自分の上司の不倫現場を目撃してしまいます。彼らの目には確かに感情がこもっていて、自分と同じ会社にいながらも彼らは「会社ゾンビ」ではないのだと気づきます。
2人から影響を受けた寧々は、自分の趣味を活かして、日常の大半を過ごす会社の模型を作ることにします。完成したら「会社ゾンビ」になりかけている自分も変わるのではないかと。

1冊の中に月曜日から週末までの物語が6編と、表題作『やってられない月曜日』のエピローグが収録されています。模型を作り進める日々の中で、寧々は下着泥棒事件や別の不倫騒動に巻き込まれてしまいますが、トラブルを乗り越えながら自分らしく生きていきます。働く女性の本音を描いたワーキングガールストーリーです。

恐れずに飛び込まないとわからないことがある-『公園へ行かないか?火曜日に』柴崎友香

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【あらすじ】毎年アイオワ大学で開催されるインターナショナル・ライティング・プログラムに参加した著者は、多くの人物と関わりながら異国の空気に触れ、大統領選挙を間近で見て、新しい視点を生み出した。様々なことを考えた著者が紡ぐ、実体験を基にした11編の物語。

「インターナショナル・ライティング・プログラム(IWP)」とは、アイオワ州アイオワシティにあるアイオワ大学が毎年開催しているもので、世界中から40人弱の作家や詩人が招かれて10週間一緒に生活をするというプログラムです。表題作『公園に行かないか?火曜日に』は、IWPの参加者であるブルガリア人のウラディミルにパークに行こうと誘われて向かうも、なかなか目的地に辿りつきません。喉がカラカラになるほどの長い距離を英語で議論しながらパークを目指したり、街を歩いたり、大統領選挙を経験した3ヶ月の物語です。

ある日トモカはホラームービークラスで各国のホラー映画を見て、みんなで議論を交わしますが、日本では出ないであろう意見が飛び交うことに新鮮さを覚えます。

「植民地支配とそのトラウマについて話していたのは、ここはアメリカなんだって感じがした」
「そうそう、ほかの国で観ていたらそこが話題の中心にはならない」

目の前に確かにあるものと、人の意思や関係ややりとりで成り立っていることと、今自分と話している人が思っていること知っていることと、わたし理解していることが、常に少しずつずれていて、それがときどき重なったりつながったりして、いくつもの層のあいだを漂っているみたいに、暮らしていた。しかしそれは、わたしが英語を理解していないことだけが理由ではないと、わたしはわかり始めていた。

アメリカの地で多くの人と拙い英語で話しながら過ごし、トモカは自分がどこの言葉でなにを書きたいのか、自分にとっての「エモーショナルな言語」とは何なのか、作家としての自分について、考えさせられます。その中でもいつもとは違う場所に飛び込んだからこそ気づけることがあり、日本で見る景色とアメリカで見る景色は違うことを学んでいきます。
本作は実体験を基にした作品なので、現地で様々なものを見たかのような臨場感が楽しめます。

最も愛したあの人の手を離したのは私だった-『水曜の朝、午前三時』蓮見圭一

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【あらすじ】翻訳家で詩人としても活躍した四条直美は、1992年の秋に45歳の若さで亡くなった。直美は病床で娘の葉子に伝えたいことを4巻のテープに吹き込んだ。そこには直美の生涯で1度の大恋愛について語られていた。

戦争犯罪人という汚名を着せられた祖父を持つ直美は、中高共に首席をとり、お茶の水女子大の外文科を卒業した賢い女性でした。卒業後は老舗の出版社に勤めますが、英語を活かせる希望した部署ではなく総務部での電話番となります。この時代に女として生まれた自分には少しのものしか手に入らないと知り、屈辱を覚える日々でした。
親が決めた許嫁がいた直美は、生きているうちに「自分はこれをした」と誇れる何かを見つけたいと考え、親の反対を押し切って大阪万博でコンパニオンの仕事を始めます。そして半年という短い勤務期間の中で、直美にとって運命の相手となる臼井礼と出会ってしまいます。

何百人もの中から、自分にふさわしいたった一人だけの人を見つけた。ふいにそう思い当たり、どうしようもなく泣けてきた。これは何かの間違いか、そうでなければ奇跡だと思った。

直美が初めて臼井を見かけたのは万博開催の半月前で、一目見ただけで彼のことを知りたいと思いました。やがて2人は顔見知りになり、食事をしながらオペラや絵画についてなど様々な話をして関係を深めます。今度一緒にビールを飲みに行く約束をしますが、その約束は果たされませんでした。
のちに直美は臼井が鳴海という女性と交際していることを知ります。直美は恋心を捨てられず、身を裂かれるような想いをしながら、2人が並んでいる姿を切なく眺める日々でしたが、ある日から臼井の姿だけ見かけなくなります。周りから外交官になれるとも言われていた優秀な臼井には、人には言えない秘密があり、ひっそりと万博を去っていたのです。彼を忘れられない直美はもう一度会うために居場所を探り始めます。

「十年たって変わらないものはない。二十年たてば、周りの景色さえも変わってしまう。誰もが年をとり、やがて新しい世代が部屋に飛び込んでくる。時代は否応なく進み、世の中はそのようにして続いていく」

時間は止められないとわかっていながらも、「もしもあの時ああしていたら」と考えてしまう直美の切ない思いに胸が締めつけられます。忘れられない人を思い出す、ほんのりビターな大人のラブストーリーです。

物書きには読み手にも悟られない裏の顔がある-『木曜組曲』恩田陸

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【あらすじ】小説家として名を馳せた重松時子は、住んでいたうぐいす館で4年前に亡くなった。親戚の中で物書きを生業とする4人と時子の担当編集者は、毎年うぐいす館で追悼の宴を開いているが、今年はどうやら様子がおかしい。「皆様の罪を忘れないために、今日この場所に死者のための花を捧げます」と書かれたカード付きの花束が届いた。自殺と思われていた時子は殺されていたのか? 皆の罪とは一体? 楽しい宴は物書き同士が時子の死について推理しあう会へと一転する-。

本作は大学講師兼ノンフィクションライターで時子の親類の絵里子、出版プロダクションを経営する、時子の異母姉妹の静子、時子の姪で、歯科技工士兼純文学作家のつかさ、同じく時子の姪で主婦兼ミステリー作家の尚美、編集者として多くの時間を時子と共にしてきたえい子の5人が、時子の死の真相を探るミステリーです。

小説というのは、密室の個人作業で産み出され、完成品だけが人の目に触れる商品。誰でも小説家の内幕には興味があるもの。きっと裏にはどろどろした物があるに違いないと読者は思っている。そういう憶測を満足させつつ裏切る。読者の下世話なのぞき趣味を逆手に取って、別のところに連れていく。

きょうび、待っていても原稿は降ってこない。目を付けたものはこちらから出かけていって、掘り出し、作り出し、プロデュースするのが編集者の役目なの。

こう語る物書き4人と編集者のえい子は、魅力的な文章を書きながら自由奔放に生きる時子のことを尊敬しており、また時子には適わないというコンプレックスを感じることもありました。「時子に物書きとして認められていなかった」「編集者と物書きという関係の確執に苦しんでいた」など、全員時子を殺す動機がないとは言い切れない状況です。謎の花束を贈ってきた人物はこの中の誰かなのか、それとも真実を知る第三者なのか、5人はお酒を飲み食事をしながら真相に迫っていきます。

木曜日が好き。週末の楽しみの予感を心の奥に秘めているから。それまでに起きたことも、これから起きることも、全てを知っているような気がするから好き。

上の歌詞は、生前時子がよく歌っていた木曜日についての歌詞です。木曜日を愛していた時子を思いながら、時子が亡くなった2月の第2週の木曜日を挟んで3日間に渡って彼女を偲ぶ会を開催している5人。時子について語る楽しい飲み会のはずが、時子の死は他殺だったのかもしれないという事実に直面し、5人は驚きを隠せません。話せば話した分だけ全員の挙動や発言に怪しい点にあることに気づきます。そして物書きと編集者ゆえの視点の鋭さで全員の隠し事が1つずつ暴かれていくことになります。
「木曜日は全てを知っているような気がする」と時子が歌ったように、うやむやになっていた真実をしだいに知ることになる5人。話が二転三転する中にも、恩田陸ならではの繊細な心理描写が描かれています。

あなたの人生の一冊、お探しします-『金曜日の本屋さん』名取佐和子

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【あらすじ】北関東の小さな駅・野原駅の中には、“読みたい本が見つかる本屋”という噂が流れている本屋がある。その名も「金曜堂」。女店長の南槙乃に言えば、探している本を必ず見つけてくれるという。業界最大手の本屋「知海書房」の社長子息である倉井史弥は、昔、父に借りた本を一行も読まないまま失くしてしまっていた。病に伏した父からその本を返してほしいと言われた倉井は、切羽詰まって噂の本屋に足を運ぶことにした。

「父が受け取ってくれる『白鳥の歌なんか聞えない』が見つからなくて、困ってます」

新刊本、古本、初版、単行本、文庫本、あらゆる『白鳥の歌なんか聞えない』を入手して父に渡しても、「これじゃない」と言われてしまい、倉井は藁にもすがる思いで金曜堂を訪ねます。病床の父が弱っていく姿に耐えられず、この本を渡せば父の生きる希望になるのではと考えながら。

金曜堂で目当ての本は見つからず、泣く泣く諦めようとしますが、最後に思い切って女店長・南に話をしたところ、地下書庫に連れて行かれます。辿りつくまでに迷路が続く広大な地下書庫は、地下鉄を走らせる予定で作ったホームを改造した場所でした。戦争によって計画が絶たれてしまった空間を、返却期限を過ぎてしまい本屋が返品できなくなった多くの本で埋め尽くした驚きの地下室。
南は『白鳥の歌なんか聞えない』を見つけ、「倉井が読むことでその本は父が探し求めていた本になる」と伝えます。「本を読んでも内容を読み取れない自分は、本を読む資格なんて持っていない」と言う倉井に、南は読書の楽しみ方を教えます。

「読書をする資格のない人、なんていないですよ」
「でも」と口ごもる僕に、槇乃さんはつづけた。
「読書は究極の個人体験です。人によって響く部分が違うのは、当たり前なのです。作者の思いやテーマをくみ取る努力を、読者がしなければならない義理はありません。好きに読めばいいんです。感想を誰かと同じになんかしなくていいんです」

本を読むことの自由さを語る南の言葉で、倉井は読んだことがなかった『白鳥の歌なんか聞えない』を初めて読むことに決めます。
金曜堂を舞台に多くの人と本がつながっていく、『金曜日の本屋さん』シリーズ第一弾。読み終わった時にはじんわりと心が温まる感覚になります。各話ごとに素敵な本が登場するので、人生の1冊を見つけたい人にもおすすめです。

【おわりに】

曜日にまつわるタイトルの5作品を紹介しました。何気なく過ごしている日常の中で、当たり前のように巡ってくる曜日。月曜日は仕事のことを考えたり、週の真ん中の水曜日は昔の思い出に浸ったり……。曜日ごとの雰囲気を味わうことができる珠玉の作品が揃っているので、それぞれの曜日を思い浮かべながら、ぜひ読んでみてください。

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